2018年、一人出版社について書かれた記事を目にしてから、スパイス関連のプロダクトや本を作りたい、とぼんやり思いはじめた。
木漏れ日の柔らかい光が注いでいる小さな山小屋で、黙々と作業する。たまに浮かぶそんな妄想が、いつの間にか思考の大半を占めるようになった。
コロナ渦に入ると、サロンは度々休業となり妄想時間が増える一方だ。そこで2020年から、まずはちょっとやってみることにした。
以前に両親から買った小さな山小屋。当時は、父が舞台で使った道具が山積みで、物置倉庫のような状態だったが、空いた時間はいつも山小屋に行き、1年ほどかけてカオスなものたちを捨てたり整理した。
同時に、編集ソフトのインデザインや、フォトショップ 、イラストレーターを分厚い本で勉強しながら、作りたいイメージを形にする挑戦。
私にとって本は、ふと立ち返るきっかけになったり、お守りのような存在だ。手にしたときにほっとする本を作ってみたい。
途中、友人akiちゃんとの会話から、作ってみたい本のイメージがさらに膨らむ。akiちゃんと撮影したり、編集したり、はじめての作業は楽しいことだらけで、最高にいい本ができる気がした。
やっぱりいつか山小屋で小さな小さな出版社をやろう。準備はじめに、まずはホームページを作ってもらったのがだいぶ前。
本を作り始めて8ヶ月、120ページ程までできた。出来てみると統一感がない。妄想していた本とは違う。
いい雰囲気と残念な感じが入り混ざっているなんとも微妙な出来で、全くだめな方が変えようがある。逆に何をどうしたらいいのか分かりにくい。
そしてここまでやってみて、本ってどうやって出来上がるんだろう?という根本的な知識不足に気がついた。気づくのがだいぶ遅い。
ちょうどそんなときに、著者として出版するお話をいただいた。私が2020年から始めたアーユルヴェーダの定期便「クラシツクル」をみてくださり、これを1冊の本にまとめたらとても役立つ本になると声をかけてくれた。
本作りのことを何もわからないのに、本作りの大ベテランの皆様に、平気な顔で「私も本を作りたいんです、勉強させてください」と言ってしまう。こういうところは、私の強みでもあり恥ずかしいところだと思うけれど、内容を詰め、絵コンテを作り、撮影をし、と、いくつもの行程を経て本が形になっていくその流れの中にいることができて、これは何よりの勉強だった。
専門用語をいちいち聞く私にも丁寧に説明くださったり、たくさんフォローもしてくださる、ありがたすぎる環境。そして特に、本作りに長年携わっている皆様それぞれの、本を作るときの視点や心構えを肌で感じることができたことは財産だと思う。このことについてはまたいつか書きたいと思う。
ライターさんがある日、「本作りはマラソンに似ている」と言った。
その日はその言葉にピンとこなかったけれど、本作りの後半はまさにマラソンのようで、もうずいぶん走って疲弊しているのにゴールを目指して、最後の力を振り絞って走っているような緊迫した雰囲気だった。
皆様が時間をかけて丁寧に丁寧に取り組んでくださったおかげで、私が10年間、講座で伝えてきたことがよりわかりやすく詰まった書籍ができた。
「アーユルヴェーダの心地いい暮らし」(主婦の友社)もうすぐ発売日。
ちょっと一息ついたところで、作り途中の本作り、再開。
ここまでの期間で、これから本作りをするにあたって肝に銘じたことがいくつかある。
その一つは、長年やっているプロの真似をしないことだ。
形が見えてきた。2022.9 ここから歩緩舎はじまる。